令和5年第1回定例会~シンギュラリティ時代を見据えた教育について~

令和5年第1回定例会で行った一般質問と答弁を全文公開します。

  • 持続可能な財政運営について

令和5年度当初予算の一般会計は過去最高額の1956憶円となっております。今後も税収が右肩上がりの歳入超過であれば問題なく財政運営は可能なようにも思えますが、懸念点も多々あります。令和5年度当初予算の特別区交付金には令和6年度、7年度、8年度に入る予定だった財産費が前倒しで入ってきており、その額は39億円程度と伺っております。これを差し引けば令和4年の特別区交付金の額を下回ります。財政フレームに記載されている特別区交付金については令和5年度の金額に経済財政諮問会議が示した成長率を乗じているため令和6年度以降の数値については実態よりも楽観的な試算にもみえます。

歳出については一般財源充当事業費が昨年から42億円程度増加しており、予算概要に示されている項目はざっと見る限り単年度で終了する事業は少なく、経常経費化していくものが多数だと想像できます。財政フレームに記載されている一般事業費、扶助費、まちづくりの費用なども年々新しい財政フレームを作成するたびに事業費が膨らんでおり、歳出については膨張を続けている印象です。公債費負担比率についても令和7年度は新庁舎建て替えの関係で10%を超えます。これは説明を受けてきましたので一定の理解を持ちますが、令和10年度に関しては9.7%と10%に迫ります。今後、物価高騰などの影響でまちづくり事業費などの増加し、歳入が落ち込めば10%を超過してしまう可能性は大いにあります。起債発行額の引き下げとまちづくり基金積立額の引き上げを検討する必要があると考えます。

施設整備基金の積立額についても物価高騰などの影響で前回施設を建てたときと次回建て替える際の費用は学校建設費を例にとれば30億円から60億円程度と約倍増している状況です。単純に減価償却費25%で積み立てても実態には建設費の12.5%しか賄えないことになるため、25%の数値の見直しが必要と考えます。学校建設費を例に出しましたが基金ごとに過去の建設費と最新の建設費の差額を調査して実態に合わせて基金積立額のパーセンテージを見直してはどうか?

【区長】昨年8月に新たな財政運営の考え方をお示しし、基金の積立目標額を設定したところであり、その目標額を毎年の予算に計上していくことが、まずは必要だと考えている。今後、計画的に基金への積立て、活用を進めていく中で施設整備や歳入状況などを踏まえながら、適切な基金の積立計画について考えていく。

  • シンギュラリティ時代を見据えた教育について

シンギュラリティとはレイ・カーツワイル博士らが提唱した概念で、AIが自己学習を繰り返し、人間の知能を上回る社会が訪れることを指します。それによってオートメーションが加速して人間の仕事がAIに代替されると言われています。もともとは2045年ごろに訪れると言われていましたが、最近では2025年、26年に訪れると予測する方もいます。最近はAIでアバターや画像を生成したり、質問に対して回答をする対話型のチャットAIが登場して話題になっています。このチャットAIはプログラミングコードや論文を書くこともできます。世界トップレベルのMBAの試験でも成績優秀の評価を得る回答を出すなど、精度の高さには世界中が驚いております。これらの精度については文字通り日進月歩の速度で進化しているため、このペースで様々な技術が学習を続けると人類が取り組んでいる仕事が奪われる未来がすぐにくるかもしれません。私たちの時代は世界で戦えるグローバル人材の育成が必要だと言われていましたが、これからは人工知能などロボットと戦えるまたはうまく使いこなせる人材の育成が必要になります。人工知能や機械ができること、できないこと。人間が生きるうえで必要な創造性や好奇心などの興味開発や人格形成に影響を与える非認知能力を開発する教育環境が一層必要になります。シンギュラリティ時代では現在、私たちが取り組んでいる仕事の多くがなくなると予測されていますが、こういった未来に備えて子どもたちのどういった能力を伸ばしていくべきと考えるか?

【教育長】持続可能な社会の担い手となる子どもたちには、一人ひとりが予測困難な社会の変化に主体的にかかわり、自ら考え、学び、行動していく、未来を切り拓く力を育成していくべきと考える。

日進月歩で進化するAI技術によって訪れる未来は機械に支配されるようなディストピアな未来から、人間が単純な作業から解放されてAIを駆使して自由な生活を謳歌する明るいユートピアな未来と両極端に予想されています。AI技術はあくまでもツールであり、正しく使いこなせるような教育が必要であると考えます。総合的学習の時間などで最新のAI技術などに触れて技術革新によってもたらたらせる未来を想像しながら、AI技術を活用する学習機会を作ってはどうか。見解を伺います。

【教育長】小学校の総合的な学習の時間や中学校の技術・家庭での新しい学びの中で、プログラミング教育を通じて身の回りのAI技術に気づいたり、その有用性や必要性を認識したりする力を現在育てている。今後、先行事例を参考にAI技術に触れる機会の在り方について検討してまいりたい。

児童生徒それぞれのペースに合わせた個別学習環境を整え、教職員の負担軽減を図るためにAI学習ドリルの導入なども検討が必要です。児童生徒の学習時間や先生の授業の負担を削減することができれば、総合的学習の時間や探求学習の時間をより多くさけるようになりますし、先生が児童生徒によりそったサポートも可能になります。AI学習ドリルはすでに一部の学校が私費会計により利用を始めていると聞きます、効果検証したうえで全校に導入を進めてはどうか見解を伺います。

【教育長】AI学習ドリルについては、すでに学校で実践されているものも含め、今後複数のドリルについて比較検討していく予定である。財政的な負担も含めAI学習ドリルの導入の仕方については総合的に判断していきたいと考えている。

教育においても変えて良いこと変えてはいけないことを見極める不易流行の考え方が必要です。先ほどのべたAI学習ドリルなども施策も導入後に効果検証してどのくらい教育現場で活用するべきかの見極めも重要になります。データ活用による科学的根拠とした政策決定の必要性が近年様々な場面で言われております。これは教育政策分野においても必要です。教育経済学の分野で幼少期の子どもたちの家庭環境や受けた教育が大人になってどのような影響や成功をもたらすか、因果関係を示すデータなども出てきております。教育政策の効果を検証するため教育委員会に教育シンクタンクの設置、もしくはアドバイザーの登用を検討してはどうでしょうか?見解を伺います。

【教育長】教育委員会では、教育に関する学識経験者3名が毎年「中野区教育委員会の権限に属する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価」を実施している。今年度、「ICTを活用した学習指導の充実」の重点点検項目の中でデジタル社会における学校の在り方や教育活動の在り方についてアドバイスをいただいたところである。この外部評価をさらに充実させていきたいと考えている。

シンギュラリティ時代を見据えた教育として必要なのは、社会情勢や未来を予測したうえで課題を設定して解決するためのアイデアを実現する能力であると考えます。こういった能力を養うためには会社を起業して新規事業開発などの過程を経験するアントレプレナーシップ教育は有効です。国はスタートアップ5か年計画の中で大学生・小中高生に対してスタートアップ創出支援を打ちだしております。東京都もスタートアップ戦略の中で小中学校向けの起業家育成プログラムを示しています。中野区は産業振興方針の中でビジネスサポートセンターの機能を立ち上げるという考えが方を示しています。そういった国・都・区の施策を活用して産学官とが連携し、児童生徒がアントレプレナーシップ教育を経験できる機会を創ってはどうか、見解をうかがいます?

【教育長】これまでの小中学校でのキャリア教育の中で、起業家教育についても取り組んできており、区内中学校でカレーのスパイスを調合して店頭に置かせてもらったり、区の職員等の名刺の作成をしたりする起業体験的な事例がある。今後は、産学官と連携している他自治体の先行事例等も踏まえてキャリア教育として取り入れられる内容について研究していく。

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