誰ひとり取り残さない不登校児童生徒対策を提言~令和4年第2回定例会一般質問~

令和4年第2回定例会において行った一般質問と答弁を全文掲載いたします。

一般質問の様子

1. 新たな財政運営の確立について
酒井区長が施政方針説明の中で基金積立の考え方を見直すとされておりますので、基金の考え方について伺います。財政調整基金の年度間調整分について区は歳入が3年連続で50億円減少しても予算編成ができるようにするため150億円の残高を維持するという考え方をしています。令和3年度では当初予算段階では一般財源歳入が68億円減少する見込みで財政調整基金の年度間調整分残高は年度末には約26億6千万円減少する見立てでした。実際のところ昨年度の補正予算などを計算したところ年度末の残高は増加しています。
リーマンショックの影響が出た平成22年度も当初予算段階では一般財源歳入は54億円減少見込みで年度間調整分残高は年度末に約46億円減少の見立てでした。実際のところは2千4百万円増加しています。歳入の実績が見込みを上回ったことや年度末の財源更生、決済剰余金などの積立が影響して年度間調整分の残高は減少するはずが結果的に増えおります。このギャップを埋めるには歳入見積の精度と執行率を高める必要があり予算編成上の課題でもあります。年度間調整分の運営方針については予算が組めない最悪の事態を回避するという名目ですが、区民生活が逼迫している状況では生活を維持するための支援も必要になります。

令和2年度と3年度のコロナ禍における財政調整基金年度間調整分の運用は適切だったのかということに関しての総括と、新たな財政運営の方針では現状からどのように変更するのか伺います。

【区長】新型コロナウイルス感染症の影響により、歳入状況が見通せない中において令和2年度については、新規拡充事業を中心に執行見直しに取り組み、財政調整基金の取り崩しを抑制したところである。一方、区独自の新型コロナウイルス感染症対策については、予算編成時には財政調整基金の活用したものの、最終的には地方創生臨時交付金の充当による財源更生をおこなったものも多かったところである。結果として、令和3年度決算速報値による財政調整基金残高は令和元年度残高を上回っているところであるが、適時適切な基金活用をしてきたものと考えている。新たな財政運営の考え方では、区の歳入が減少した場合においても、できる限り行政サービスを滞ることなく、円滑に進めていくうえでの担保として財政調整基金の年度間調整分の残高200億円確保していく考えである。

道路・公園整備基金とまちづくり基金に関してはいずれも道路占用料や財産費などの歳入ベースの積立計画になっており、令和4年度当初予算概要で示された財政フレームによると令和7年度に不足分を補うために多額の積立が計画されています。前定例会の際に積立額の平準化を図るべきと質問いたしましたがその後の検討状況について伺います。

【区長】新たな財政運営の考え方においては、道路・公園整備基金、まちづくり基金とも、今後10年間の基金活用計画額の平均を毎年の当初予算編成時に積み立てていく計画を考えている。

2. 学校教育について

(1)不登校児童生徒への対応について
令和2年度の中野区の不登校の児童は125名、生徒は187名で合計312名となっています。コロナ禍で全国的に増加しており令和3年度では更に増加傾向だと言われています。中野区は教育センターによる教育相談、スクールカウンセラーによる教育相談、SSWの巡回支巡があります。また、今年度からSSWの増員、各小学校・中学校に不登校児童生徒の担当教員が設置されるなど体制整備が進んでいます。児童生徒が不登校になる要因には先生や生徒との対人関係で問題が生じたケースや、授業についていけない、授業に興味をもてないというケース、気力が出ないという様々なケースがあります。さらに原因は1つではなく複数のケースが複合的に絡み合っています。児童生徒の一人ひとりのペースやニーズに合わせた支援体制を作らなくてはなりません。区は不登校になった児童・生徒の要因を把握しているのか?また不登校児童生徒のうち相談または支援に結びついていない人数を把握しているのか?伺います。

【教育長】これまでも、各学校が行う年3回の欠席日数調査の結果により、不登校の要因や関係機関につながっていない児童・生徒の情報を把握してきた。不登校の要因の主なものは「無気力、不安」や「親子の関わり方」、「学業の不振」、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」などである。また。令和2年度の不登校児童・生徒312人のうち、子ども自身が担任以外には、つながっていないのは小学校で24人、中学校で24人いる。今年度より、学校からの毎月の報告と併せて、指導主事等が学校を訪問して、児童・生徒や保護者の状況とその状況や要望に合った支援ができているのか詳細な聞き取りを行っている。

令和4年6月に文部科学省が都道県宛に「不登校に関する調査研究協力者会議報告書」について通知をだし、その中でオンラインでの不登校支援やフリースクールとの連携などに取り組むよう記載されています。中野区では令和4年度から全クラスで授業を配信できる環境が整いました、不登校児童生徒がオンライン授業へ参加できる機会を担保する必要があります、区の取り組み状況について伺います。

【教育長】各学校では、不登校児童・生徒も含め、教室で授業をうけることができない場合にはオンライン配信を必ず行っている。また、現在は教育支援室においても、教育系のwi-fiが使用できるため、学校のオンライン授業をうけることも可能である。今後も一人ひとりのニーズやペースに合わせて支援体制を推進していく。

不登校児童のうち、学校の教師生徒とコミュニケーションが取れているお子さんと、そうではないお子さんがいます。現在、中野区内の中学校で5校、NPO団体が運営しているオンラインフリースクールによる支援を活用している生徒がいます。この取り組みは児童生徒一人ひとりとオンラインで面談をして個別の支援計画を作成して、メンターが細かくフォローするという内容です。ウェブ会議のように直接話をする仕組みとバーチャル空間でアバターを介して間接的に話ができる仕組みもあります。こういった仕組みでコミュニケーションをとる敷居を下げる工夫がされています。このオンラインフリースクールはすでに一部の学校が取り入れていますが、取り入れていない学校とで機会格差が生じてしまっています。既存の不登校支援に結びついていない児童生徒と社会との接点を維持できる選択肢を増やしていく必要があります。教育委員会としてもこのオンラインフリースクールの取り組みを、教育センター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、不登校担当教員を通して対象のご家庭に伝わるように周知を徹底してはどうか?

【教育長】不登校支援についての様々な方法を家庭に提供することは大変重要であると考える。その中においても、オンラインを活用したフリースクールを含め有効な支援方法の情報を教育センター内の相談員やスクールソーシャルワーカー、各校の不登校担当教員で共有し、必要に応じて中野区で取り組んでいる様々な支援の方法をわかりやすく家庭に提供してまいりたい。

戸田市はデジタル庁が進める「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業」に採択されました。住民データや校務データ、学習データについて個人ごとに紐づけ、分析できるようにすることで不登校支援や虐待対策の強化、また事前に兆候を察知して未然予防ができる体制を目指しています。戸田市の担当者は検討を進める中で国がトップダウンで教育データベースを作成するにも自治体の課題やニーズはそれぞれ異なるため柔軟な仕様が良いと指摘をされています。中野区でも不登校支援や児童虐待防止、学習の個別最適化などを進めるうえでどういったデータが必要なのか。またはどういった支援やサポートが効果的なのか仮説検証をして精度をあげていく取り組みが必要です。こういった体制を構築するためフリースクールの運営など実績とノウハウがある民間団体と連携して中野区の不登校支援やデータ連携の在り方についてについて検討をしてはどうか?

【教育長】中野区においても、今年度は不登校児童・生徒一人ひとりの詳細は実態把握を行っている。その後、本区の実態を分析し、検証を行う予定である。また、これまでつながりのなかった関係機関との連携など新たな不登校支援の在り方についても研究していく。

(2)コミュニティ・スクールの実証実験について
4月の子ども文教委員会で「地域と学校の連携・協同体制の整備について」の報告で中野区コミュニティ・スクールの考え方が示されました。今年度からモデル校が選定されて9月から運用がスタートします。中野区コミュニティ・スクールは中学校に学校運営協議会を設置して学区内の小学校に地域学校運営協働本部を設置するというものです。協働本部にはコーディネーターを配置して学校運営協議会で検討された学校行事等について必要な人材をマネジメントして企画を実行する役割を担います。この考えについてPTA関係者から現在の地区懇談会と構成員や役割が重複しており出席する会議体が増えるだけなのではないかと懸念の声が寄せられました。
国の法定型コミュニティ・スクールは教員採用について都に意見することができます。その意見をみて教員は自治体を跨いで希望する学校へ赴任できる仕組みです。これにより学校それぞれが目指す教育方針に必要なスキルを持つ教員や、必要な部活動の顧問などの人材をマッチングできるわけです。反対に中野区で働いている優秀な教員が別の自治体に流出する可能性もあります。東京都23区の中で国の法定型のコミュニティ・スクールを導入している自治体は何区あるの伺います?(13区 全校導入6区、一部導入7区)

【教育長】国の法定型でコミュニティ・スクールを導入している区は23区中13区であるが、小中学校全校で導入している区は6区、7区は小・中学校の一部で導入しているという状況である。

国の法定型コミュニティ・スクールは教職員の任用について都の教育委員会に意見をあげることができるというメリットもあります。これにより学校の教育方針に沿った形で教員を補強することもできるわけです。中野区コミュニティ・スクールとしての良さを生かしつつ法定型の利点も考慮した形への移行も検討すべきと考えるがいかがか?

【教育長】コミュニティ・スクール導入については、今年度モデル校を選定し、9月以降に活動を開始する予定である。モデル校での活動を通じて課題を検証、改善し、法定型の移行についても併せて検討していく。

3.中間支援組織と公益活動団体の連携について
地域課題、行政課題を町会などの地域団体、地域のボランティア人材に協力をしてもらうという施策が年々増えています。すでに町会については区から依頼される業務が多くて大変だという声をよく伺います。また町会によっては活動している年齢層や人員は様々で、高齢化している団体も多く地域の担い手を増やしたいというのがどこも共通の課題だと思います。

先ほど触れたコミュニティ・スクールで目指す地域学校協同本部の取り組みについても、私が所属している町会ではPTAなどと小学校の連携が濃密で、すでに学校行事などが盛んにおこなわれています。この地区には事業を営んでいる方々が一定数いるため青年部などの担い手も比較的多くおります。地域によっては担い手が不足して高齢化している町会も多くあります。そういった地域では学校単位で人材を募ってもなかなか地域行事がうまくいかないのではないかと懸念をしております。公益団体とボランティア人材について地域ごとに活発なところ、そうでないところがあると考えるが区としては把握する必要があるのではないでしょうか?

【区長】公益活動団体やボランティア人材については、区民活動センター単位で区が把握しているもの、社会福祉協議会が把握しているもの、町会自治会など区民活動センター単位で運営委員会事務局が把握しているものなどがある。それぞれが把握する公益活動団体やボランティア人材についても、地域ごとに情報共有し、すりあわせをするなど、情報の一元化、見える化を行い、地域によって活動が活発でない理由なども、地域課題としてとらえ、課題解決に向けた支援を行う必要があると考えている。

私は中野駅周辺でゴミ拾いの活動をしているのですが参加者の中には地域での活動が初めてという方も沢山います。そういった方は「ゴミ拾い」「ボランティア」と検索して団体のHPを見て参加されています。そこで参加者同士の交流が生まれて他の活動にも参加してみようというマッチングが度々発生しています。中野区内にもボランティア活動をしてみたいという潜在層は一定数います。地域単位で担い手を発掘するのは困難であるため、こういった気軽に参加できる活動、団体と連携して広域でマッチングを図っていく必要があると考えます。中間支援組織が区で活動している公益団体や地域学校協本部に対して人材をマッチングしてはどうでしょうか見解を伺います。

【区長】公益活動団体に対し、伴走支援している社会福祉協議会や区民活動センター運営委員会事務局は、中間支援組織と位置付けられる。今後、それらの中間支援組織の連携、協働により、学校とも連携し地域の団体や人材をマッチングできるような体制づくりが必要だと考える。また学校支援ボランティアに登録している団体や人材を地域にマッチングすることで、団体や人材の活躍の場を広げるとともに、地域においては、地域課題の解決、地域の活性化につながることが期待できると考える。

以上ですべての質問を終わります。最後までご覧いただきありがとうございました。

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