令和2年第三回定例会一般質問において一般質問をしました。
内容は以下の通りです。
「ウィズコロナ」の区政運営とデジタルトランスフォーメーションについて
新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い経済に大きな影響が生じており、令和3年度中野区の一般財源は92億円減収すると見込まれています。令和三年度の基準となる一般財源規模は687億で令和2年度から63億減少する中で、区民の生活支援、地元産業の支援など行政需要は増大しており極めて困難な財政運営が求められます。予算がない中で知恵を絞る、国、都の財源確保や外部資源を積極的に活用していく必要があります。
内閣府が令和2年7月17 日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針 2020 」の中で「今般のグローバルな規模での感染症拡大は、パラダイムシフト とも言うべき大きな変化を世界に引き起こしている。(省略)我が国も、デジタル化を原動力とした「Society 5.0」実現の取組を推進してきているが、行政分野を中心に社会実装が大きく遅れ活用が進んでおらず、先行諸国の後塵を拝していることが明白となった。 デジタル化、そして、Society 5.0 の実現は、経済社会の構造改革そのものであり、制度や政策の在り方や行政を含む組織の在り方なども併せて変革していく、言わば社会全体のデジタルトランスフォーメーションの推進に一刻の猶予もない。」と述べています。
行政分野の対応の遅れが指摘されていますが民間では指数関数的な速度で技術革新が起きています。先月イーロンマスク氏が代表を務めるニューラリンクは人間の脳にAI型チップを埋め込み人と人工知能を接続する技術を発表しました。この技術により認知症など脳の病気を予防改善するなど医療的な効果が期待されています。それ以外にも人間の記憶をバックアップしたり、ロボットなどに人格をインストールすることができるといいます。こういった技術は倫理的な面で賛否両論の議論を巻き起こすことは間違いありません。新しい技術に関する規制の可否は自治体が考えることではないかもしれませんが、技術革新の速度がますます上がるため社会のデジタルトランスフォーメーションを推進し、より良い未来を創るためにも自治体職員のICTリテラシーを高めることは必須となります。
(1)オープンデータの推進について
中野区のHPにオープンデータ一覧が掲載されていますが情報公開、情報請求のあり方に課題が見られます。営業許認可の情報公開請求手数料が中野区は全国の自治体と比較して高いとソーシャルメディア上で話題になっていました。例えば食品営業許可と廃業届のデータを分析することで中野区内にある食品営業事業者の開業率、廃業率などの定点観測が可能になります。またこのような分析があれば国や都の補助金の対象期間外に新規開業した店舗数の把握や、廃業率の高い地域や業態を特定することができます。こういった事業者に対して重点的な支援策を検討することも可能になります。区独自で分析しなくてもオープンデータとして公開することで民間団体が分析した内容を参考にすることができます。既存の情報公開請求制度では手続きの際に情報取得の利用目的や請求者の肩書きなどを確認する内容ではありませんし、そもそも利用目的によって公開の可否を判断することができません。
そこで、区のオープンデータガイドラインにもあるオープンバイデフォルトの考え方から既存の情報公開請求の窓口以外にもHPなどでオープンデータとして公開を希望する情報について要望を受付てオープンデータ化の可否や公開するフォーマットを検討する体制を構築すべきと考えます。見解を伺います。
【区長】現在、区では情報システム課がオープンデータを所管しており、順次オープンデータ化を進めているところである。区民、事業者等からのオープンデータに関する相談や要望については、区の窓口として情報システム課が受け付けていることをホームページでPRするなどさらに活用を促進していきたい。
(2)官民データ活用計画について
オープンデータ化や官民データの活用において課題があるため区としても方針を固める必要があります。またキャッシュレス化、デジタル手続きの推進にしても自治体独自にシステムを開発、または改修する際に費用が発生します。新しい取り組みを行う際は費用対効果が不明なため実証実験などを通して社会実装を行う体制が必要です。例えば総務省の「情報通信技術利活用事業費補助金(地域IoT実装・共同利用推進事業)」という制度があります。この補助金は民間事業者との共同による実証事業を通じて地域課題や行政課題を解決することを目的としたものです。ウィズコロナの時代においては新しい行政サービスの形も模索していかなくてはなりません。しかし、この補助金制度の対象は官民データ活用計画を作成している自治体に限られます。官民データ活用計画は雛形ベースで策定するパターンと、既存の地域情報化計画等をベースに策定するパターンがあります。
中野区が今年度に改定する地域情報化推進計画に官民データ活用計画を位置付けてはどうか。見解を伺います。
【区長】基礎自治体における官民データ活用推進計画の策定は努力義務であるが、今後区がオープンデータなどを活用した民間との協働・協創に向けた取り組みを強化していくに当たっては必要な計画であると認識している。中野区の官民データ活用推進計画については、現在策定作業中である地域情報化推進計画の中に位置付けることを想定している。
(3)産官学民によるデジタルトランスフォーメーション推進体制について
今後は民間が持っているビッグデータなどのリソースを自治体から提案して活用するなど積極的な姿勢が求められます。例えばモバイル事業を行っている大手企業は位置情報の滞在、人流などのリアルタイム分析ツールを9月末まで自治体向けに無償で提供しています。このようなデータがあれば中野区内で人が集まる場所、時間帯、移動経路の定点観測や分析ができるようになります。API連携により中野区のHPで分析ツールを公開することができれば区民も混在状況を調べられますし、中野区としても分散化を呼びかけることや、ウィズコロナのまちづくりや産業振興に活かすことができます。このようなビックデータの活用は有料なものが多いですが、以前、神戸市では同様のツールのAPIを無償提供してもらい市民参加のアイデアソンを開催しておりました。自治体側が企業側に社会的意義のある企画を提案していくことが求められます。反対にこういった提案を積極的に受付けて事業を中野区にとって意義あるものに調整しつつ推進していくことも必要です。現状では庁内で各所管が民間連携を調整していますが部署を横断するような大きな提案は企画課が担当しています。企画課は事業を多数抱えておりますが、本来は政策調整に注力すべきで今後はこういった体制を強化する必要があります。また調整及びプロデュースを手がける人員は益々重要になるためICTの知識を持つ外部人材を登用しOJTで職員を育成していくという考え方もあります。官民データ活用計画にも位置付けられる、民間と共同による実証事業の推進と庁内を横断的に調整する体制を構築し、民間アドバイザーとして外部人材を登用しはどうでしょうか。ご見解を伺います。
【区長】専門的知見を有する外部人材の活用についても検討して参りたい。
(4)実証事業の提案を呼び込む体制づくりについて
デジタル化の進展度合いに係る世界の都市ランキングによると「東京都と日本は、都市全体のデジタル化、オープンガバメント、モビリティ、キャッシュレスなどいずれの項目も10位以下にランクしています。世界各地でAI、IoT、ビッグデータ等の新技術の社会実装が進むなか世界の国・都市ランキングで他国・他都市に後塵を拝しているという状況です。国内の基礎自治体単位で比較しても渋谷区、横浜市、会津若松、福岡市、つくば市、横瀬町などは新技術による社会実装のプラットフォームを構築しております。例えば会津若松市では自治体基幹系システム等が保有する福祉関係情報を集積し、AI技術により分析することにより、支援の手が行きとどいていない、潜在するDV、虐待、孤独死等の可能性のある要支援対象者を発見し、見守り等の支援を強化するための仕組みの実証事業を行なっています。
中野区としてもウィズコロナにおける取り組みや、子育て、見守り、産業支援、業務効率化など課題を設定した上で新技術を活用した社会実装の提案を受け付ける体制を整備すべきと考えます。ご見解を伺います。
【区長】先進自治体で実施している、企業からの提案を一元的に受け付け官民が連携して実装を図っていく仕組みはこれからの官民連携のあり方の1つとして有望だと考えている。今後、区としてもそういった仕組みの構築について検討して参りたい。
2.マイナンバーカードの利活用について
マイナポータルから特別定額給付金のオンライン申請を受け付けたためか、5月以降マイナンバーカードの申請件数は増加しており7月の時点で昨年の交付件数を超えています。昨年の交付件数は13406件で月平均約1100件です。今年度は4月で2100件、5月で4300件 6月6300件、7月3900件、8月4300件で月あたりの交付件数は2倍から6倍近くに上昇しています。マイナンバーカードの受付、交付体制を強化するべく8月17日から課内応援体制による人員増加しています。通常、夜間窓口は火曜日延長 日曜日は第1、第2のところ月曜日から金曜日の毎日夜間延長し、9月末まで臨時窓口では郵送による交付を行っています。9月からマイナポイントの制度がスタートしています。マイナポイントの登録は来年3月までなので、マイナンバーカードの交付に時間がかかると登録に間に合わない方が発生する恐れがあります。
マイナンバーカード申請件数の増加に伴い、これまで様々な対策をとっておりますが申請から交付まで2ヶ月程度の期間を要しており、窓口の増加など供給体制を強化するまたは、供給スピードを落とさないために10月以降も課内応援体制を継続する必要があると考えるが現状では可能か見解を伺う。
【区民部長】昨年度と比べ、特別定額給付金のオンライン申請やマイナポイントの付与制度などにより、マイナンバーカードの申請数が大幅に増加している。このため現在、平日の夜間と日曜日にマイナンバーカード交付のための臨時窓口を開設しているところであるが、今後も適切な体制を組むことでマイナンバーカードの円滑な交付に勤めて参りたい。
令和3年の3月からマイナンバーカードを健康保険証として使用できるようになります。同制度には6つのメリットがあります。①医療保険の資格確認がスピーディになる②医療保険の事務コストが削減される③健康保険証としてずっと使える④手続きなしで限度額以上の一時的な支払いが不要になる⑤健康管理や医療の質が向上する⑥医療費控除が便利になるなど様々なメリットがあります。
8月7日から初回登録の受付制度が始まりましたが、区民に対して同制度のメリットの周知と設定のサポート支援が必要と考えます。見解を伺います。
【区民部長】マイナンバーカードの健康保険証利用の初回登録については、国からも区市町村に対し、国民健康保険および後期高齢者医療の被保険者への円滑な手続き支援や周知広報等について要請されているところである。区としても区民の利便性の向上やマイナンバーカードの利活用の促進を図る観点から、初回登録の申込方法の周知や、申込手続きの支援に取り組んでいきたいと考えている。
中野区議会議員(無所属)1987年1月29日生まれ 36歳 卯年 中野区・中野在住
法政大学大学院政策創造研究課程修了。大学在学中は極真空手に打ち込み関東大会準優勝。2010年には東京大学アントレプレナーシップ論講座で最優秀賞を受賞。2015年中野区議会議員選挙で1268票獲得するもあと170票およばず落選。その後、インターネット投票を推進するIT企業を経て2019年初当選。共著に「弱者にやさしい会社の話」(KINDAI E&S BOOKS)
所属委員会
総務委員会 副委員長/情報政策等調査特別委員会 委員
その他活動
NPO法人ストリートデザイン研究機構 専務理事/グリーンバード中野チーム リーダー/昭三自治会 防災部長/中野消防団第六分団 団員/東京青年会議所中野区委員会 広報幹事/第45回わんぱく相撲中野区大会 実行委員長/中野区赤十字奉仕団昭和分団 団員/昭和区民活動センター運営委員会 委員/中野区青少年育成昭和地区委員会 委員/中野区交通安全対策協議会 委員/中野駅前大盆踊り大会実行委員会 委員