生成AIを業務改善に活用せよ!~令和5年第2回定例会一般質問

令和5年第2回定例会で行った一般質問と答弁の全文を掲載いたします。

  1. 行政報告について

行政報告の「基本計画後期の取り組みの具体化」の中で昨年度にまとめた新たな財政運営の考え方を踏まえた新たな財政フレームを示すと」書かれております。新たな財政運営の考え方を作成した時期から物価、人件費の指標となる公共工事設計労務単価が昨年比で5.2%上昇するなど財政見通しは変化しておりますので、検証が必要ではないかと考えます。

新たな財政運営の考え方における一般財源充当事業費は予算編成段階での歳入見込み額と歳入額の差分から基金積立金を差し引いた額としています。そこから歳入の余った分を義務教育施設整備基金に積み増すとしていますが、この積み立てについては計画性がない状態になっています。

学校建設費を例にとれば建設費は約30億円から約60億円と以前建てた時よりも倍増しており、単純に減価償却費25%で積み立てても実態には建設費の12.5%しか賄えないため、特に金額の大きい義務教育施設整備基金については積立額の見直しが必要と考えます。

財政白書に記載されている貸借対照表の建物と減価償却費を平成27年度から、令和3年度までの7年間の推移を確認したところ、建物は約1287億円から約1661億円と374億円増加。減価償却累計額は約819億円から897憶円へと約78億円増加しています。

取得原価が安い古い建物から建替えていくため、後に建て替える施設ほど取得原価が高くなり、後年度になるほど減価償却費累計額と積立額が増加する傾向にあります。歳入が好調で財政に余裕があるうちに積立額を増やして後年度の負担を平準化する必要があるのではないでしょうか。

減価償却累計額と実際にこれから発生する建設費との差額を精査したうえで積立額の%が妥当なのか検証してはどうか、中野区の見解を伺います。

【区長】現在、特定目的基金への積立額は、対象施設の当該年度に発生する見込みの減価償却相当額の25%を積み立てることにしていることから、物価の高騰などにより実際の建設費と差額が生じることは認識している。義務教育施設整備基金については、財政状況により一般財源の確保ができた場合は積立額を増額しており、今後の整備状況も踏まえた検証を行い、持続可能な財政運営を確立していく。

今後の財政の見通しとして中長期的に歳入が落ち込んでいく可能性もあります。また2025年には団塊の世代が後期高齢者となるため扶助費などの高騰が予測されております。中野区では中野駅周辺と西武新宿線沿線のまちづくりの事業が進んでおりますが、当初予算の財政フレームをみると年々、まちづくり予算が前年に作成された財政フレームの金額よりも増加している傾向にあります。それに加えて近年の物価と人件費高騰の影響でまちづくり事業費は予定よりもさらに増加していくことが想定されます。

まちづくり事業費の増額分は国や都の交付金で補えるかどうかも未知数です。不足分が特別区交付金として補填されたとしても、他の算定分が削られてしまうため総額の交付額が増える訳ではありません。令和6年と令和10年は工事完了を迎える市街地再開発事業があるので工事費が大きくなる可能性がありますし、特に新北口駅前エリアの工事費は規模が大きい事業のため、物価高騰に備えるべく、まちづくり基金においても基金積立の増額についても検討すべきと考えます、中野区の見解を伺います。

【区長】まちづくりについては、物価高騰の影響を受けて人件費の増も想定されることから、工事費など事業費の増加が見込まれる。一方、昨年度に新たな財政運営の考え方をお示しし、基金の積立目標額を設定したところであり、その目標額を毎年の予算に計上していくことがまずは必要だと考えている。今後、計画的にまちづくり基金への積立て、活用を進めていく中で、適切な基金の積立計画について考えていく。

2.自治体DXについて

ここでは今、話題の生成AI「chatGPT」の活用について伺ってまいります。「令和5年第1回定例会で、シンギュラリティを見据えた教育についての質問の中で「chatGPT」について紹介しましたが、あれから数か月でchatGPTは3.5から4へバージョンアップされその性能は飛躍的に進化し、活用する自治体や企業も日々増えております。

生成AIとは、既存のデータを大量に学習してユーザーが入力した指示に対して応答を生成するAIの一種で、文章、画像、音声、プログラミングコードの生成や、データ分析などを得意としています。この指示を「プロンプト」といって「プロンプト」が漠然としていれば、漠然とした応答がかえってきますし、具体的な条件をつけた「プロンプト」を入力すれば具体的な応答がかえってきます。適切な指示を出すスキルを「プロンプトエンジニアリング」と言って現在、注目されています。性能としてはMBAスクールの試験や司法試験を突破する能力をすでに有しております。生成AIのユーザー数は公開2カ月で1億人に達しており、インターネットやiPhoneが登場した時のように世界を変革する技術と注目されています。

人工知能(AI)の能力は膨大な量のデータを「処理」するだけでなく、「分析」し、「学習」し、「予測」し、「判断」するレベルに達しており、実際に金融機関の一部では、与信審査業務にAIを導入する例も出てきています。自治体におきかえると補助金・助成金などの書類審査を自動化などが考えられますが、こういった書類審査を自動化することができれば業務の効率化は進みますし、オンライン申請の対象も拡充できる可能性があります。

生成AIを自治体に導入した場合に期待される役割は行政文書や資料の作成補助、アイデアだしのブレーンストーミング、内部管理事務の自動化と効率化、データ分析による意思決定のサポート、プログラミングの補助によるシステムの内製化、区民の質問に回答するチャットボットなど活用できる範囲は実に多岐にわたります。導入には費用対効果についての評価が重要になりまので、先行導入している東京都、つくば市、神戸市、などの事例も参考にする必要があります。また生成AIには無料のサービスと有料のサービスもありますので、まずは無料のサービスを試験的に導入して相性の良い部署や業務を調査することも考えられます。

生成AIの活用に関して、すでにさまざまな自治体で導入が進んでいます。この生成AIを今後、中野区の業務等で活用してはどうでしょうか、見解を伺います。

【DX室長】「ChatGPT」などの生成AIは一定のルールのもとに導入することで業務等の効率化に資することができるものと考えている。現在、その導入及び活用方法等について検討しているところであり、まずは試験的に導入して業務等への活用の可能性を検証する考えである。

マイクロソフト社は、生成AIの中でも特に技術の進んでいる「ChatGPT」を開発したOpenAI社に多額の投資を行ってパートナーシップを結んでいます。「Microsoft Azure」というクラウドサービス上で「ChatGPT」を利用することのできる「Azure OpenAI Service」を企業や自治体向けに提供しています。また、生成AIを搭載したMicrosoft 365 Copilotのリリースを発表しています。中野区は日本マイクロソフト社とDX推進にかかる協定を締結していますので、生成AI の導入検討にあたって同社の支援を受けてはどうか、見解を伺います。

【DX室長】先般、日本マイクロソフト社から「ChatGPT」などの生成AIを活用したサービスについて、サービスの概要などの情報提供を受けるとともに、区の業務で活用が想定される分野などについて意見交換を行ったところである。今後、生成AIの活用方法や導入手法を検討していくにあたっては、日本マイクロソフト社とも連携・協力しながら検討を深めて参りたい。

生成AIを導入する場合、職員が仕組みを理解し、自発的に活用ができるように、適切な教育が必要になります。生成AIに適切なプロンプトを入力するほどアウトプットの精度を上げることができます。生成AIの導入にあたっては、「プロンプトエンジニアリング」の研修も必要であると考えますが、見解を伺います。

【DX室長】生成AIは、具体的かつ明確な質問をすることで、より精度の高い文章等を生成することができ、効果的に活用ができるものと認識している。そのため、生成AIに対して的確な質問を行うことのできる質問構築技術である。「プロンプトエンジニアリング」を習得するための研修も実施していきたいと考えている。

活用に当たっては適切な倫理観を持ち、区民のプライバシーやセキュリティを十分に考慮する必要があります。先行導入自治体では、個人情報や機密情報などの入力を禁止するというようなガイドラインを設けています。導入にあたっては、情報漏洩等のセキュリティ上の懸念を考慮し、利用する際のルールなどの作成が必要と考えます、見解を伺います。」

【DX室長】生成AIは様々なソーシャルワーキングサービスと同様に中野区情報安全対策基準における「約款によるサービス」にあたるため、業務上の必要性があっても職員が無断で利用することはできないこととなっている。導入にあたっては、個人情報や機密情報などの情報資産を守るため、セキュリティ上のリスクを明確にしたうえで、利用方法及びルール等を盛り込んだマニュアルやガイドラインなどを作成するとともに、改めてルールの遵守を徹底していく。

3.学校教育について

6月22日に文部科学省が生成AIの学校向けガイドラインの原案をまとめたと複数のメディアが報道しています。ガイドラインの基本的な考え方として「生成AIを使いこなす力を育てる姿勢が重要」「懸念やリスクを踏まえて限定的な利用から始める」としています。適切な使用と不適切な使用についていくつか例示をしており適切な例としては「グループ討論で不足する視点を見つけるために使用」不適切な例は「読書感想文やテストなど学習評価に係る場面での使用」です。また、教員の働き方改革の一環として、教材作りのたたき台や模擬授業の相手に生成AIを使用するなど校務での活用例なども盛り込まれています。取り扱い指針については近いうちに公表して周知するとのことです。

本格的な対応について国のガイドラインが公表されてからになりますが、体制整備や区としての考え方を早い段階から準備をしていく必要があるのではないでしょうか。実際にすでに授業に活用している小学校・中学校も現れており、理科の授業や道徳の授業で活用されています。ちなみにopenAIの利用規約によると対象年齢は13歳以上で18歳未満は親の同意のもとで利用が可能とされていますので現時点では児童向けには使えないようです。

chatGPTの登場以来、様々な企業が生成AIの導入を発表しており、社会を生きていくうえでAIとは無関係ではいられない時代がすでに訪れはじめています。子どもたちにとっても将来避けて通れない技術になりますから、早い段階から良い点と悪い点など特性を理解して使いこなせるような教育機会が求められます。

生成AIは新しい技術ですが、すでに文章や図表や画像の内容を解析する能力を備えています。さらなる進化が予想される中、暗記や計算はAIに代替されることになり、今後は、創造性、共感力、批判的思考、倫理的判断といった人間固有の分野への能力開発に教育の重点はシフトされていきます。

本格的な活用については文科省の指針の通知を踏まえて検討すべきですが、国は導入を前提に議論を進めています。教育現場においては今後、子どもの学び方・教員の教え方・教員の働き方という観点で中野区においても議論を進める必要があります。学校教育における生成AI導入についてどのように検討を進めていくのか教育委員会の見解を伺います。

【教育長】現在、ChatGPTは利用規約で「13歳未満は使用不可、18歳未満は保護者の許可が必要」とされており、学校でも現在は使用していない。学校現場での生成AIの導入については、文部科学省による生成AIの学校現場での使用に関する方針等を踏まえながら、教職員の業務改善への活用、児童生徒の学びを向上させるための使用など、導入が効果的だと想定される場面を整理し、教職員や専門家の意見なども取り入れながら研究を進めていく。

児童生徒が学校外でもChatGPTを使用する可能性を考慮し、正しい使用方法を教えるリテラシー教育や年齢制限などの注意喚起にも取り組んでいくことが重要と考えます、教育委員会の見解を伺います。

【教育長】学校には、文部科学省の「情報モラル学習サイト」や東京都教育委員会の「GIGAワークブックとうきょう」などのデジタルコンテンツを必ず活用し、発達の段階に応じた情報モラル教育を実施するよう指導している。「ChatGPT」等生成AIについては、国や都においても有効な資料ができていないため、教育員会では有機者等の意見を参考に研究してまいりたい。

全国的に教員不足、なり手不足が問題化されております。生成AIを活用することで教職員の労働環境を改善すると同時に、教育の質をあげる取り組みが期待されます。学校事務の業務改善や授業での活用について現場からの創意工夫を促すために教職員向けに研修を行ってはどうか?教育委員会の見解を伺います。

【教育長】現在も、ICT教育推進リーダー研修等で様々な課題な取り上げ、教員同士での協議や情報交換の機会を設けた研修を行っているが、生成AIの活用についてはまだ不十分であると考える。生成AIの活用に関しては、早急に取り扱うべき課題であると認識しており、まずは全教員が生成AIについて正しくその特性を理解するところから研修を始めていく。

以上ですべての質問を終了いたします。最後までご覧いただきありがとうございました。

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